社会的費用とは、社会全体が被る損失のこと。
厚生労働省研究班によると、認知症の社会的費用は14.5兆円(2014年)にものぼるそうです。
そして、家族の介護負担がこの費用のうち4割です。
認知症の社会的費用の内訳
厚生労働省研究班によって認知症の社会的費用は14.5兆円と試算されましたが、その内訳がこちら。
・医療費:1.9兆円(入院34.3万円/月、外来3.96万円/月)
・介護費:6.4兆円(住宅サービス219万円/年・人、施設入居353万円/年・人)
・家族による介護コスト:6.2兆円(382万円/年・人)
この結果を見ると、家族負担がいかに大きいかがわかります。
もし、この家族負担がなければ、認知症患者一人当たり年に382万円分の仕事を他の仕事に回せるためにGDPの増加に貢献できることになります。
湖南界の調査を担当して慶応大の助教は
「医療や介護サービスの費用だけでなく家族負担の大きさを初めて明確に伝えることができた」
と語っています。
また、NPO法人の理事長は
「当たり前と思われがちな家族介護の負担が初めて可視化されたことでようやく社会的な評価を得ることができた。負担に見合う支援策を充実させて欲しい」
とコメントしています。
仕事と介護の両立支援策が必用
認知症の人は2025年には約700万人になると予想されています。
実際にどうなるかはわかりませんが、増えていくことを前提とした対策が必要です。
住宅で介護を担っている人の約7割は60歳以上で「老老介護」が目立っています。
このため介護で体力的、精神的な負担を強いられていて、体調を崩してしまう人も多くなっています。
また、現役世代は仕事との両立が困難になっています。
働きながら介護をしている人は、290万人以上いる一方で、年に10万人が介護離職をしています。
介護休業制度の利用度は1%にも達しません。
立命館大学の教授は
「介護離職によって働き手と納税者が失われる。介護による疲弊や離職を防がなければ社会的な損失はさらに拡大する」
と警告しています。
日本女子大の教授は
「心身の健康を保ち仕事など社会生活を送りながら介護できる環境を整えなければ、家族も共倒れし医療費や介護費の増大に跳ね返る。先行投資が欠かせない」
と指摘しています。
世界の認知症の社会的費用は6040億ドル
WHOが2012年時点で世界での認知症の社会的費用は6040億ドルと報告しています。
また、アメリカでは2010年時点で2150億ドル(約27兆円)、イギリスも263億ポンド(約5兆円)と発表しています。
このような状況を鑑みると、認知症への対策は家庭レベルから国レベルまですべてで取り組まないといけない状況だと言えるでしょう。
「私は関係ない」
と対岸の火事だと思っているとあとで痛い目にあいます。
結局、社会的費用の負担は税金であったり、個人の労力などで補うことになるのですから。
まとめ
認知症の社会的費用は14.5兆円です。
この社会的費用はうつ病(3兆円)の5倍近くです。
いかに大きなコストなのかがわかります。
ある意味、最優先で取り組まないといけない課題となります。
また、今健康で認知機能が正常であっても、油断せずに認知症にならないように心身が健康になるように努めることが大事です。
介護者の支援としては、ショートステイや訪問介護などを充実させることや介護施設の拡充、介護者の増加、介護の効率化などを進める必要があるでしょう。
日本の高齢化は世界一進んでいます。
そして、世界が日本がどのように高齢化社会と認知症の増加の問題に取り組んでいくかに注目しています。
参考:読売新聞