2000年、介護施設では転倒事故の防止などを理由に利用者の手足をベッドなどに縛るなどする身体拘束が原則、禁止された。

これにより改善が進んだ。しかし、介護施設は職員の入れ替わりが激しいため常に「縛らない介護」を教え続けないといけない状況である。

研修でお年寄りの気持ちを知る

介護福祉士のIさんは、介護研修を受けた。

タオルで右の腕と右足を固定、車椅子にずっと座りっぱなし。トイレに行きたくてスタッフを目で追うが伝わらない。夕方になるとあきらめに似た感情が沸いてきた。「もう、動かなくていい」。

研修では脳卒中で半身マヒになった人、認知症で転倒にリスクがあり利き手と利き足を拘束された人の状況を追体験する。

このような研修を受けることで、「お年寄りも縛られたらこんな気持ちになるのか」ということがわかるという。

Iさんの勤める特別養護老人ホームでは2011年の開設以来、一度も身体拘束をしていない。

この特養のスタッフは非常勤も含め全員が初日にこの研修を受ける。

かつては特養や老健(介護老人保健施設)でも身体区足は日常的に行われていた。

しかし、2000年に介護保険法で原則禁止となった。

例外は

1、切迫した状況にある
2、他に手段がない
3、一時的対応

という要件を満たし、十分に確認された場合のみ。

もし、漫然と拘束が行われた場合、虐待と見なされます。

身体拘束ゼロへの手引きで禁止対象となった行為

厚生労働省の「身体拘束ゼロ作戦推進会議」が2001年3月に作成した「身体拘束ゼロへの手引き」がこちら。

・徘徊防止で体幹や手足を縛る
・転落防止で体幹や手足を縛る
・降りないようにベッドを柵で囲む
・チューブを抜かないように縛る
・ミトン型の手袋をつける
・車椅子に拘束帯などで固定
・立ち上がりを妨げるいすを使う
・脱衣しにくいつなぎ服を着せる
・迷惑行為防止のために縛る
・向精神薬を過剰に使う
・自分で出られない部屋に隔離する

しかし、実際に拘束がどれだけ減り、現状、どれだけ拘束が行われているかの実体はよくわかっていない。

全国抑制廃止研究会の全国調査(2015年)によると

拘束率の平均は

・老健:2.1%
・特養:1.5%

大阪府の調査(2018年)によると

身体拘束ゼロは

・老健:81%(229施設)
・特養:85%(102施設)

このようにかなりばらつきがあります。

ばらつきがある理由として、

「拘束を認める要件の解釈にグレーゾーンがあるため漫然と拘束する施設が残っているのではないか」

とある老健の事務長は指摘する。

身体拘束ゼロへをあきらめない

転倒など患者の安全を確保するために拘束は仕方ない。

このようにあ考える施設もあります。

しかし、一方で、拘束をしないという理念を守るという施設もあります。

このような施設では、

・家族から拘束を依頼されてもしないで済む方法を一緒に考える
・職員が互いに相談しながらいろいろな工夫をする
・転倒を遅らせるために動線を短くする
・腕にあざなどできたら原因や状況を家族に伝える
・etc

など拘束しないためにできることをしています。

身体拘束の弊害とは?

安全のための身体拘束であっても様々な弊害があります。

・動かなくなるために認知症が進む
・床ずれができて身体が固まる
・ベッドの柵を越えて転倒してしまい危険度が増す
・車椅子ごと倒れてしまう
・etc

このように安全のための拘束がかえって危険度を増す結果になることもあります。

まとめ

患者を身体拘束してしまうことでの弊害をなくすためには身体拘束をせずにいかに患者が満足でき安全な介護をするか工夫が必要です。

ただ、現実的にはいろいろな課題があります。

その一つがスタッフ不足。

スタッフが不足しているとすべての患者に十分に目が行き届かなくなります。

世話をできるスタッフを増やす努力にも限界があります。

ですので、スタッフが少なくても介護できるような仕組み作り、そしてさらに患者を増やさないために患者予備軍の人達への予防などの取り組みが必用です。

私ごとですが、父親が肺炎で退院後、療養のために老健のような病院に長期入院しました。

最初は車椅子に座れていましたがだんだんと筋力が衰えて寝たきりとなり身体が固まってしまいました。

ですので、身体を動かそうとすると痛がりました。

父はミトンの手袋やつなぎ服を着せられていました。当時はなんとも思いませんでしたが今思うとあれは身体拘束だったのでしょう。

ただ、もし身体拘束が禁止されているとしても病院に何も言えなかったかも知れません。

なぜなら、もし病院に「それでは出て行ってください」と言われたら困ってしまうからです。

やはり大事なのは病院選びになりますが、良質な病院が自宅近辺にあるとは限りませんし、良い病院が見つかってもすぐに入れるとは限りません。

父が入院する病院を見つけるために、複数の病院をまわり一番良さそうなところを選びましたが、それでもこのような状態です。

今後さらに高齢者が増えて、施設に入る人も増えつつある現状を考えると、どのように快適な施設を運営していくか、これはとても大きな課題であると思います。

参考:読売新聞